sous-35 & sous-lmc
※こちらは2023年のカラーです
sous-35 & sous-lmc
sous (スー)はこれまでのvlaminckのふたつのバックパック“BLANC(ブロン)”と“quatre(キャトル)”の基本的な機能を踏襲しつつ、キュッと細身に絞ったかたち。
これにより様々なメリットを生みだし、vlaminckの理念である“快適な道具は安全性を高める”という面でも納得できるものとなりました。
40リットルのquatreは夏山向けに作ったのですが、これを開発しているうちに自分自身のギアも軽量化が進み、ベースウェイト(水・食料を含まないギアの総量)が6kg程度にまで落ちていました。そのため夏場には少し大きいと感じ、さらに切り詰めたジャストサイズが欲しくなり開発に着手したバックパック、それがsousです。
ただし、単にサイズを一回り小さくするのはとても簡単なこと。それじゃあ芸がないということで、quatreとは違ったアプローチで、異なったコンセプトで差別化をし、サイズの違いだけじゃなく選択肢のひとつとして個性を持たせました。
sous Development
Introduction
sousをつくるにあたって使用するTPOを明確にするため、まずは自分の使っているギアを見直すことから始めました。対象は夏山。容量を把握するため一度改めてテント泊装備にウェアや水・食料まですべてを準備し、どういった場所をどのくらい歩こうかと想像しました。
vlaminckでは先に発表しているBLANCとquatreで軽量感・フィット感は実証済み。また、その形状から底擦りの心配もかなりのレベルで軽減されることを実証済みですが、これを今回はさらに突き詰めてよりストレスなく歩けるものにすることを目指します。
Concept
「もっと楽に。より安全に。」
Forme
コンセプトをクリアするため、sousでは思い切った縦長形状にしました。この形状が以下の3つのメリットを生みます。
1.狭い岩場での行動力を高める
2.パッキングをシンプルにする
3.軽量感を生みやすくする
狭い岩場ではコンパクトに背中に収まる細さがメリットになります。また、vlaminckのバックパック(以下.BP)の特徴のひとつであるせり上がった底面も、sousではさらにシャープに立ち上げることでより擦りにくくしてあります。※1
パッキングのしやすさという点でも細身ということを活かして上に上に積み上げるようにパッキングしていくことになります。広さが無い分荷物の配置を考えやすく、パッキングがシンプルになりました。また歩行時の揺れによるBP内での荷崩れ及びゆるみが起こりにくく、出発時に仕上げた美しいパッキングのままキープしやすいというメリットもあります。
軽量感の生みやすさという面でも複数のメリットを持ちます。これについてもあとで詳しく記載しますのでぜひ最後までご覧ください。
※1、足の届かない高い段差を前向きで降りる様な場面でも、バックパックの底面を擦らずにクリアできるためバランスを崩しにくく安全につながります。
メリット1.狭い岩場での行動力を高める
この新しいアプローチのバックパックを試すため、岩場を楽しめる剣岳でテストをしてきました。手足を使う岩場でも有効か否かを試す目的です。
山頂アタック時、テントはテント場に残していましたが、それ以外は背負って行きました。目的はテストですのでほとんどの荷物をsousに詰め、本体は膨らんだ状態にして山頂へと向かいます。水もしっかり2ℓ持ち、BPの膨らみ、重さ共にそれなりの状態で、テストしたいのは主に手足の曲げ伸ばしの自由度、BPの岩場への干渉の有無です。
結果として岩場・クサリ場の登り下りに何の不安もなく、背負っていることも感じず(邪魔に思うことがなかったということ)に遊ぶことに集中できました。往復CT6時間ほどの道中、テント泊装備のBPを擦ったのは2回だけ。段差の大きな急峻な岩場で、前向きに下りる場面で底面を2回ほど。振り返って見上げるとさすがにこれは避けられないかと、思わず笑ってしまういうくらいの急峻な場面でした。これは今後の課題にするとして、今回はこの35ℓサイズでこの動きやすさなら充分に及第点はクリアしていると判断しました。
また、強度の面ですが今回も多分に漏れず、写真にも写っているこのテスト用のサンプルBPは強度をあまく制作し、各所の負担を検証してきました。結果は当然問題なし。お客様にお届けするものはこれよりも強く作っているのでご安心いただければと思います。
Field test
SLIM
2.パッキングをシンプルにする
パッキングは通常のセオリー通り、ウェアやギアの重量配置と使用頻度を考慮して順番に積み上げていきますが、中の広さが無いためどんどん積み上がって埋まっていきます。良い意味で左右や前後の配置を考える余地があまりなくなり、考え方はシンプルになったと感じています。
ロールトップ開口部を締める際はvlaminckの全シリーズ共通で、しっかり力いっぱい絞り込むこと。パンパンのBPをカチカチの一塊にするイメージです。絞り込みが緩いと、歩行時の揺れも相まって余った空間に荷物が逃げ、全体がゆるゆるになってしまいます。この状態は横揺れにつながり、バランスも悪くなる恐れがあります。身体との一体感を得るためにもロールトップはしっかり絞りましょう。
出発時にきっちり仕上げた美しいパッキングのまま歩いた方がかっこいいですよね。
パッキングは細身形状を活かして、荷物を順に積み上げていくだけ。
余談ですが、参考に普段私自身が行っているパッキングを紹介しておきます。
まずはハイドレーションチューブつきのボトルを背面ポケットにセット。
ウェアやギアのスタッフサックはひとつひとつが塊りになってしまうので極力使用せず、一番下にダイレクトにテント生地を押し込み、底面の形状に添わせる。次にインナーレインカバーorビビィを袋状にBPの内側にセットしたらその中にシュラフ、インシュレーション、着替えと、軽いものから入れていきます。全て畳まず放り込むイメージ。
わたしは極力スタッフサックの使用は避け、ただ底へ底へと押し込むことでデッドスペースをつくらないように無駄なく詰めていきます。例えば、シュラフの小さなスタッフサックにシュラフを入れるとパンパンになり、円柱状のスタッフサックの形がきれいに出ますよね。BPも同じで、隙間なくパンパンに詰めてあげればBPの形状が綺麗に出せます。そのために生地物はばらして片っ端から詰め込みます。小分けに管理は出来ませんが、そもそもそんなに多くの衣類を持っていくわけでも無いし、テント場に着いたら身に着けるものがほとんどなのでスタッフサックが必要になることはありません。
ウェア類をあらかた入れたら残りはエマージェンシーキット、コッヘルセット、食料など、袋にまとめられ塊りとなった重めのものの順番になります。これらは隙間を衣類やタオル等で埋めていきながら極力身体側に配置して完了です。
レインウェア以外のものを詰め終えたら最後はロールトップ。ロールトップは“強くきつく”絞っていきます。パッキングしたBPをひとつの硬い塊りにするような意識で力を込めてコンプレッションしていきます。
この絞りが弱いと後で歩行時に生じる揺れによってBP内で荷物が緩みだらしなくなっていきますし、このゆるみはバランスのブレを誘発するので疲労につながっていくと考えます。
しっかりと絞ってロールトップを閉じることができたら、表から軽く叩いて形状を美しく仕上げていきます。一部分だけ異様に膨らんだりしていてもこの作業で修正できますので、かっこいいパッキングを目指してかたちを整えましょう。
さらにこうして整形をしながらどこにデッドスペースがあるかを手の感触で見つけていきます。シワがあればその中に隙間があることが想像できます。このデッドスペースを埋めるために、最後にレインウェアを使います。
前ファスナーを開けてウェアを差し込んで、このデッドスペースを埋めていきましょう。ポイントは手のひらで少しづつ差し込んでいくこと。ウェアは畳まず、広げたまま手のひらと共に差し込み、空白の部分を少しづつ埋めていくイメージです。こうして全体の穴埋めを完了したらファスナーを閉めて最後にもう一度かたちを整えてパッキング完了。ただし、早朝のテント場や小屋など、周囲に人が寝ている時は叩く音が迷惑になるので控えてください。
ちなみにファスナーを締める時に力任せに締めるとファスナーテープに負荷がかかります。長く大切に使いたい方は、もう片方の手でファスナーがスムーズに閉まるように補助をしてあげるとファスナーのケアになりますので、明らかに物持ちが変わってきます。ぜひ試してみてください。
Packing
Capacity
今回のテストではベースウェイトが4kg、これに水2.3ℓと食料、ストックやヘルメット、サングラスなど全てを入れた最終的なパックウェイトが8kgジャストでした。
写真の物が実際のパッキングしたsous-lmcになります。ヘルメットも中に入っています。ヘルメットが外付けならパックウェイト8kgでも収まりそうな印象です。ちなみに耐荷重ですが、いうまでもなくvlaminckのBPは20kgでも平気ですのでご安心ください。
ヘルメットを外付けではなく中にしまえたことは荷物がすっきりしてとても良かったので今後夏山はこのスタイルで行くことになりそうです。
下山時は一眼のカメラも中に入れる余裕がありました。真夏用シュラフを秋口用にしたり、今回のワンポールテントよりもかさばる自立式テントに替えても容量的には大丈夫ということになります。季節や山域によって装備の量が変わっても、ある程度は対応可能ということがわかりました。
3.軽量感を生みやすくする
軽量感の生みやすさという面でも複数のメリットを持ちます。細身なので全ての荷物を身体に近い位置に寄せておけます。これはつまり常に身体に寄り添い、遠心力を生みにくく、バランスを保ちやすいということにもつながります。万が一バランスを崩した場合も背中に寄り添う設計のためバランスを取り戻しやすく、しっかりとしたウエストベルトも貢献して身体との一体感を生み出します。
また、細身にしたぶん高さを出していますが、vlaminckのBPはロールトップ部分にまでしっかりと荷物が詰まっている方が軽量感という機能を発揮しやすい設計であり、そう言った意味でもsousは理に叶った形状と言えます。
あらためて、はじめに掲載していたquatreと並んだ写真をもう一度ご覧いただくと、容量の多いquatreよりも高さがあるのがおわかりいただけるかと思います。そしてシュッとスマートに見えるsous。容量の差以上に、コンセプト「もっと楽に。より安全に。」を実現した、vlaminckの新しいバックパックです。
light weight feel
変更点
今回のオーダーから底面のバンジーコードを廃止することにいたしました。狭い登山道の多い山岳シーンにおいては使用頻度が低く、需要があまりないと感じての判断です。
Grade
今回も通常版のsous-35と、上位グレードのsous-lmc。この2種を用意しました。
sous-35
・大好評だった八ヶ岳カラーのオマージュで
ネイビーに白ポケットの配色
・Cordura500d で軽量化
・YKK止水ファスナー使用
・バックル類は全てBLANC、quatreと同様
※動画の中で通常バックルとして紹介しているものです。
main Part : ITW
YKK AquaGuard Fastener
容量:35ℓ
weight:±680g(本体)280g~(ベルトS)
price:53500
sous-lmc
2024年カラー
2024年カラーもイエローブロックファスナー&
パープルアクセントステッチが入ります。
sous-lmc
容量:35ℓ
weight:±680g(本体)280g~(ベルトS)
price: 63000
・Cordura500d で軽量化
・米軍監修、正式採用のCamouflage CORDURA 500D
・YKK止水 特注プラスチックファスナー
・マグネットバックル仕様(チェストベルト、ロールトップ )
※その他のパーツ類は全てBLANC、quatreと同様
※表面のデザインは写真の通りですが、背面やショルダー等は異なる場合があります。
通常仕様のsous-35に対して、特別な趣向を凝らした上位グレードとしてlmc(エルエムシー)と名付けてグレード分けをしました。
2023年にこの35リットルクラスを新作として発表した際に、初めてこのsous-lmcを作ったのですが、高額にも関わらず通常のsous-35よりもこちらの方が多くオーダーされ、その予想外の反応に驚くと同時に、より良いもの、より面白味のあるものを求められていると感じました。
米軍が開発に関わり正式採用されている迷彩ファブリックに、チープなブロックのおもちゃのような黄色い止水プラスチックファスナーでポップさを入れることで視認性を向上させ、本気のカモフラージュを使いながらも全体的にしゃれたイメージのデザインに仕上げました。ポケット横のステッチにもこだわりパープルの糸を用意。
さらにsous-lmcではチェストベルトとロールトップにマグネットバックルを初採用。厚手のグローブをしていても容易に脱着が可能になります。動画でもお判りいただけるように、開ける時はスライドするだけで力も必要ありません。締めたい時は近づけるとマグネットで引き寄せて勝手に閉まりますので、通常バックルに比べて開閉は非常にスムーズになります。
Thank you so much
最後までご覧いただき、まことにありがとうございました。
vlaminckをスタートさせて2年6か月、ようやく3つ目のバックパックを発表することが出来ました。
大変ありがたいことにブランドスタート初日からたくさんのオーダーをいただき、今日に至るまでオーダー制作に追われる中で、新しいアイデア、新商品の構想は積み重なれど、開発に避ける時間がつくれず、新作の開発及び発表はなかなか遠い道のりでした。
しかしながら、日々応援してくれるみなさんの声やvlaminckを後押ししてくれる投稿にも励まされ、なんとか発表にこぎつけることが出来ました。感謝しかありません。
今回はlmcというものをつくりましたが、これは私の気持ちの表れだと思ってください。自分の得意なものづくりを仕事としてやらせていただいている時点で非常に恵まれていることは重々承知なのですが、それでもなお変化を求めるのが卑しいところで、今回はこういったかたちで少し遊びました。正直申しまして、非常に楽しいです。
普段はコストや手間暇の問題等で使用をためらう生地やパーツを、抱えてストレスにするよりも一度やりたいようにやってしまえという気持ちで突き進めました。自分に素直に表現した方が良いものができるのは間違いないし、その先にまた新しい道が見えてくると信じているので、そうした結果できたのがlmcです。
みなさんのこころに刺さるかどうかはわかりませんが、自分の中ではひとつ壁を取っ払うことができたので一歩前進です。そう言った意味でも、これを発表までもってこられた今はなかなかに晴れやかな気分で、すでに満足している部分があります。
また共感してオーダーしてくれる方がいたら嬉しいなというのがいまの素直な気持ちです。
最後までご覧いただきましてまことにありがとうございました。
2023/10/08 vlaminck